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「私たちは、これまで以上にお互いを必要としています。励ましあうことが大切です」

ヨルダン川西岸地区では、女性や女児が命を救う保健医療ケアから途絶されています。国際女性デーにあたり、私たちはパレスチナの医療従事者やコミュニティの人びとの一際大きな尽力を称えます

ヨルダン川西岸地区では、絶え間ない攻撃、道路封鎖、威圧的なイスラエル軍の存在の脅威によって、女性や女児の命に関わるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する健康: SRH)へのアクセスが途絶えています。IPPFは、国際女性デーにあたり、必要不可欠なヘルスケアサービス提供のために一際大きな力を注いでいるパレスチナの女性医師、ソーシャルワーカー、医療従事者そして地域コミュニティを称えます。

西岸地区の丘陵地帯の村はずれに、一軒の白いトレーラーハウスがあります。26歳のヒバは、この質素な住居に夫と三人の幼い娘たちと暮らしています。妊娠中のヒバは、灼熱の太陽の下、近くに巡回してきた移動診療所に娘たちを連れ立って向かいます。

診療所では、IPPFパレスチナ(PFPPA)のスタッフがヒバのような母親たちを迎え入れ、一日無料でSRHサービスをに提供しています。孤立し、攻撃を受けやすく、見過ごされがちな西岸地区の女性たちを対象とした、極めて重要な活動です。

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ヒバは、過去に何度か流産を経験したことが医療ケアを受ける際に、心に重くのしかかっています。
「今日は妊婦健診を受けるためだけに来たわけではありません。病院までたどり着けないときのために、もっと近くに医者や保健医療サービスが必要だということを訴えたいのです」と、ヒバは言います。

西岸地区では、イスラエル軍による保健医療施設の壊滅的な破壊、厳しい移動制限、コミュニティへの攻撃や襲撃などにより、医療ケアを受けに出かける際のリスクや問題がますます高まっています。国連人口基金(UNFPA)の推計によれば、西岸地区では20255月の時点で14,800人の妊婦が医療ケアを制限されているか全く受けられない状況にあり、1,600件以上の出産が安全でない環境で行われると予想されていました。

また、およそ1,000カ所のイスラエルの検問所、ゲート、道路封鎖により、必要不可欠なヘルスケアへのアクセスがほぼ不可能となっています。

「軍のせいで、私たちは息が詰まるようです」三人の子を連れ、診療所まで二時間かけて歩いてきたハニーンは言います。

ヒバは、こうしたさまざまな障壁は、時間がかかるだけでなく、命に関わる問題だと痛感しています。

「数カ月前、生後四カ月の息子を失くしました。待ち望んでいた男の子でした。この地域には診療所がなく、すぐに診察を受けることができませんでした。車を何時間も待ち続けましたが間に合わず、息子は助かりませんでした」

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戦争が激化し、移動制限がますます強化される中、IPPFパレスチナ(PFPPA)は2024年より、医療サービスを断たれた女性たちの命を救うサービスの提供を開始しました。IPPFパレスチナのスタッフは、辺境地域に出向き、検査機器、超音波機器や医薬品を備えた移動診療所を開設し、これらの地域に住む女性の多くがアクセスしにくい、もしくは費用を負担できない医療サービスを提供しています。

「辺境の村までたどり着くのは、決して簡単なことではありません。道路封鎖、入植者の脅威や、突然『引き返せ』と命令されたりといったことが頻繁にあります。しかし最大限の努力をします。すべての女性にケアを受ける権利があるのです」と、産婦人科医として15年のキャリアがある医師のガダは言っています。

22歳のシャイマは、移動診療所で健康診断を受ける間、二人の子どもを近くで待たせていました。

「私たちは戦争が始まって以来、経済的に非常に苦しい状況にあります。失業率が上がり、移動制限によって何もかもがこれまでより困難になっています」

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移動診療所では妊産婦ケアに加え、避妊に関するケアや助言、ジェンダーに基づく暴力(GBV)に関する支援など、より広範なSRHケアサービスを提供しています。6人の子の母でイスラム教研究の学位を持つ37歳のキファは、危機的状況にあっても知識は力であることを知って4います。

「私はいままで自分のことは後回しにしてきました」キファは、検問所や入植者への恐怖で家から出られずにいたため、婦人科の受診を何カ月も先延ばしにしていたそうです。「家族計画は、セルフケアの一部です。私たちの権利であり、責任ある行動です。これは特に今の状況では大切なことです」

キファは、村の女性たちにも自分自身をケアすることや、リプロダクテイブ・ヘルスを大切にすることは、勇気ある行動だと伝えています。

二人の子を持つ23才のアヤは、検問所で出産を強いられた近所の女性のことを忘れられず、意図しない妊娠を防ぐためにIUD(子宮内避妊具)を利用したいと考えています。「おもちゃも買ってあげられないこの状況で次の子どもを産むことなど考えられません」と語ります。

移動診療所ではこれまで、10,836人に対し60,000件以上の医療サービスを提供しました。人びとは、これらの診療所がなければSRHサービスを受けられなかった可能性があります。また、IPPFパレスチナ(PFPPA)は日本政府補正予算(JSB)の支援を受けて「出産準備セミナー」を開催し、助産師による家庭訪問や安全な出産とリプロダクティブ・ヘルスに関する地域に根差した啓発セッションも実施しました。

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メイサ・シャラルデ氏は、心理ソーシャルワーカーとしてのキャリアが長く、IPPFパレスチナ(PFPPA)のジェンダー担当者として、GBV関連サービスを地域の女性に提供しています。メイサはヘブロンで生まれ育ち、パレスチナの女性が法律上の差別、社会的偏見、経済的圧力、軍事占領などの重層的な問題に直面していることを理解しています。

「食べ物が手に入らず困っている人に対して、権利の話などできません。その場の相手の状況に合わせた話をします。ある場所では栄養や衛生の話から始め、別の場所では安全や移動についての話をします。そして、信頼関係が築けた段階で、家族計画やエンパワーメントについて話します。女性たちはサバイバーです。皆、想像を絶する困難を乗り越えて生き抜く強さと尊厳を兼ね備えているのです」

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ソーシャルワーカーや薬剤師から、医師やその他の医療従事者まで、メイサのように意志の強い勇敢な女性はIPPFパレスチナ(PFPPA)の活動の要です。

看護師として20年近くのキャリアがあるルブナは、移動診療所で女性たちに安心感を与え、その声に耳を傾け、さまざまな選択肢について助言しています。

「利用者に情報を伝えたり力づけるため、リプロダクティブ・ヘルスについて学びつづけています。私たちは、女性が常に自分たちを後回しにする社会に生きています。『あなたが大切だから、あなたを最優先にします』と、ここでは伝えようと努めています」

IPPFパレスチナ(PFPPA)の薬剤師である27才のシャイマは、仕事の話になると顔を輝かせます。「これまで手が届かなかった女性たちに手を差しのべられたとき、この仕事をやっていて一番やりがいを感じます」

シャイマは辺境の村で医薬品を配布し、医療的な助言も行なっていますが、それ以上に目に見えない「信頼」も築いているのです。

「利用者の女性が『以前は怖くて聞けなかった』と打ち明けてくれたときはとてもうれしく、自分を誇らしく感じます。女性たちには、薬だけでなく、話を聞いてくれる人も必要なのです。

これらの女性たちの活動は、知識を学び、共有することをコミュニティの人々に啓発しています。アイダは、6人の子を持つコミュニティのリーダーです。IPPFパレスチナ(PFPPA)でリプロダクティブ・ヘルスの研修を受けた後、現在は地域の女性団体でボランティアとして研修を行っています。

「私たちは、これまで以上にお互いを必要としています。戦争の重圧で、さまざまな決断ができずにいるのです。お互いに助けあっていかなければなりません」

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ヒバのように、赤ちゃんを失くし、適切な医療ケアなしで再び出産する不安を抱える女性にとって、IPPFパレスチナ(PFPPA)の支援は命綱です。移動診療所の扉をくぐる何百人の女性と同じく、ヒバは自分自身と家族のために、より安全な未来を求めています。

「娘たちのために、赤ちゃんのために、より良い世界が待っていると信じなければなりません。自由とは、検問所を恐れずに暮らせることです。安全に出産でき、不安を感じずに診療所まで歩いて行けることです。家族計画は懸命な選択であり、力です。私達女性の声を聞いてもらわなければなりません。私たちは、自分たちの身体と家族にとって、何が一番大切かを知っています」

ヒバの声は、パレスチナの何千人もの女性たちの揺るぎない声を代弁しています。それは、あらゆる障壁にも関わらず、人びとの健康と尊厳を守り続ける患者、医師、助産師、心理カウンセラー、ボランティアの声です。その活動は、医療ケアにとどまらず、抑圧に対する抵抗、困難を乗り越えるレジリエンス(回復力)であり、希望そのものなのです。

西岸地区における本活動は日本政府の援助のおかげで実施することができましたことを、ここに深く感謝いたします。

 

when

country

パレスチナ

region

アラブ世界

Subject

人道支援

Related Member Association

Palestinian Family Planning and Protection Association (PFPPA)