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IPPFグローバル調査の結果、トランプ政権の壊滅的影響が判明―パートナー団体の報告より

IPPFは米国の支援削減の影響について詳しく把握するため、2025年2月に連盟全体の調査を実施したところ、結果は予想通り憂慮すべきものでした。

米国は、世界中のサービスが行き届かないコミュニティに何十年にも渡って極めて重要な支援を提供してきました。しかしトランプ政権は突然グローバルヘルスへの支援を大幅に縮小し、何百万人もの人びとが利用していた必要不可欠なヘルスケアプログラムへの資金提供を打ち切りました。これには、命を救う家族計画やリプロダクティブ・ヘルスサービスも含まれます。

実際は、規模縮小程度の話ではなく、米国による海外援助のほぼ完全な打ち切りです。米国で政治的分断の的となってきたグローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策)は、レーガン大統領(当時)が導入して以来、民主党政権では廃止、共和党政権では再導入と、行ったり来たりが繰り返されてきましたが、より広範囲な壊滅的措置が取られている今、もはや意味を持ちません。トランプ政権は、法規定、民主的プロセス、国際的に合意された人権条約を明らかに無視した政策を次々に制定しています。

今、私たちは、援助のエコシステム全体が組織的に解体されていく過程を目の当たりにしています。それは、米国による数々の業務停止命令、反DEI(多様性・公平性・包括性)に基づく広範囲な支援削減、USAIDの解体および関連するほぼすべての契約の打ち切り、国連人口基金(UNFPA)およびその他の国連機関への資金援助停止、気候変動に関する公約からの離脱、世界保健機関(WHO)からの脱退などです。これらは、すでに困難な状況に置かれている女性や女児、LGBTQI+の人びとや世界の周縁化されたコミュニティに、とりわけ即時的で壊滅的な影響をもたらします。端的に言えば、トランプ政権による一連の措置は、人びとに必要不可欠なセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスケア(SRH)へのアクセスを極めて困難にしたのです。

 

IPPFグローバル調査

支援削減の影響について詳しく把握するため、IPPF20252月に連盟全体の調査を各国パートナー団体(加盟協会: MAおよび協力パートナー:CP)に対して実施しました。結果は、予想通り憂慮すべきものでした。IPPFの推定によれば組織全体の資金8,500万ドル以上が影響を受け、回答したパートナーの61%が資金削除に直面していました。削減の影響は広範囲に及び、即時的で、非常に不当なものです。4,000近くのIPPF関連の医療施設が、すでに閉鎖されたか、閉鎖の危機に直面しています。1,700人以上の各国の最前線で活動するスタッフが、職を失う可能性があるか、すでに失職しています。この結果、初期の試算では、IPPFパートナー団体のSRHサービスを頼りにしていた利用者のうち、約850万人がアクセスを失う可能性があることが判明しました。

 

国レベルの影響

IPPFの最前線のパートナー団体は、女性、女児、周縁化された人びとを救うため、引き続きできる限り活動を継続していきます。ただし、大半の国では資源が限られ、物資は減少し、反人権的ヘイトや攻撃が増加している状況です。

例えばマラウイでは、2025年のIPPFマラウイ(FPAM)の予算がおよそ半減する危機にあります。そのため、211のクリニックが閉鎖され、スタッフの27%が職を失う可能性があります。

「米国がUSAIDの支援を凍結して以来、IPPFマラウィの事務局長として、命を救うSRHプロジェクトのいくつかを中止せざるを得ない状況に追い込まれました。影響は即時的で深刻です。IPPFマラウィは、全国約50カ所の拠点にサービスを提供していますがそのすべてが中止もしくは閉鎖を余儀なくされました。つまり、米国の大統領令が続く限り、約172,000人の女性や女児が、必須のヘルスケアへのアクセスを失います。

今回の米国大統領令の結果、マラウイにおける意図しない妊娠および妊産婦死亡の件数は、ほぼ確実に増加するでしょう。IPPFマラウイをはじめとする団体はこれまで何年にも渡って、回避可能な妊産婦死亡を減らすことに取り組んできました。しかし、ドナルド・トランプは大統領の署名ひとつで、これまでの進展を無に帰すと脅しているのです。多くの女性や女児は、一刻を争うセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)サービスから切り離され、意図しない妊娠やHIV感染のリスクが高まった状況に置かれています。このままでは、IPPFがこれまで地域コミュニティで築きあげてきた信頼や信用まで失いかねません」と、ドナルド・マクワクワ(Donald Makwakwa) IPPFマラウイ事務局長は述べています。

ベネズエラでは、資金援助の停止により、数千人への必須のケアサービスが脅かされています。

同国の加盟協会の2025年予算の20-30%にあたる関連プロジェクト資金約229,650ドルが米国の支援削減によって危機に瀕しています。

米国の措置は、SRHサービスの10%削減につながり、スタッフの30%が職を失う可能性があります。これは予算としてだけではなく、現場の医師、看護師、カウンセラーやケアワーカーが失職するということです。

さらに、2,500人にのぼるサービス利用者が、必須のSRHRサービスへのアクセスを失う可能性があります。これは、現時点で同国のIPPF加盟協会が性とジェンダーに基づく暴力 (SGBV) のサバイバー、とりわけすでに脆弱な立場にさらされている移民の女性や女児への支援を提供できる数少ない団体であることを考慮すると、非常に憂慮すべき事態です。

バングラデシュでは、IPPFの二つのパートナー団体が双方共に米国の支援削減の深刻な影響を受けています。それぞれ、2025年総予算の30-40%が危機にさらされていると概算しています。

IPPFのパートナー団体Population Services and Training Center (PSTC)では、スタッフ全体の少なくとも14%が失職の危機にあります。PSTCSRHサービスの31%が継続の危機にあり、これには現在必須のケアをコミュニティに提供している33カ所のサービス提供拠点の閉鎖の可能性を含みます。

 

IPPFの対応

IPPFでは、変化する状況を見極め、最も影響を受けた加盟協会・協力パートナー団体に緊急支援資金を提供するため、被害低減タスクフォース(Harm Mitigation Task Force)」を立ち上げました。第一回目の支援金は、重要なSRHサービスや命を救う医療物資へのアクセスが遮断されないよう、20254月に支給されます。

資金削減の影響を最も受けたIPPFのパートナー団体への緊急支援についてはこちらから。

本調査結果のプレスリリースはこちらから。

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Subject

セクシュアル・ヘルス, 妊産婦ケア

今回の米国大統領令の結果、マラウィにおける意図しない妊娠および妊産婦死亡の件数は、ほぼ確実に増加するでしょう。IPPFマラウイをはじめとする団体はこれまで何年にも渡って、回避可能な妊産婦死亡を減らすことに取り組んできました。しかし、ドナルド・トランプは大統領の署名ひとつで、これまでの進展を無に帰すと脅しているのです。